なぜ〈花火〉まで戻らなくてはいけないような気がしたのかは、キータには分からなかった。
ミルクを買って帰るのがいつもの行動だった。
そこにいつしかテルミナルへ寄ることが加わり、子猫に出会い、魚の燻製をお釣りで買って与え、……これはいったい何を意味したものなのだろう。
キータは〈花火〉の現場に戻ると仲間を探した。
気づけば毎日活気づいている現場にすら、なんの動くものはなかった。
次に、主人たちの館へ向かった。館と言っても、それほど大きくはない。ヒトが眠るための建物と、そのほか、〈花火〉を仕掛ける為の道具が置かれている小屋があった。
キータは主人に報告をしなくては、と思いだしたが、すぐにその予定は消えた。
小屋から仲間たちがみなまっすぐに並べられ、立たされているのを見つけたからだ。その中に黒い身体のアクセルもいた。
みな、キータ以外がただ単に一列に立たされていた。
キータは子猫の冷たさと、アクセルの熱さを比べるように腕を伸ばした。
アクセルも冷たかった。
アクセルの黒い額を撫でたが、やはり動くことは無かった。
あのよく動く、キータに向けられた明るいひとつ目も力なく、光を失っていた。
そこへ、キータはアクセルの額に、ひとつの文字列を見つけた。
「meth」
見れば、仲間たち全員に同じ文字列が額にあった。
キータはそのことばが恐ろしく感じられた。
思わずキータは自分の額に手を当てた。
小屋の前に立てかけてあったスコップにうつる自分はどうだろうか。あの恐ろしいことばはあるだろうか。
キータの額には「emeth」とあった。
その途端、キータは何かを思い出した。
キータは逆らえないような強い力に引かれて、真っ暗な〈花火〉への階段を下っていた。
手に抱いていた子猫はアクセルたちのところへ置いてきてしまった。
今はその軽くなった腕すら不安定に感じるくらいに、キータは自分の歩みに抵抗を感じていた。

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