「……鶴子と同化してたんやね」
「そうなのかしら、よく覚えていないわ……」
音々子は頬に手をあてて少し息をついた。
「鶴子は幸せだったのかしら」
「どっこいショット!」
「!」
央一が音々子の隣にドスッと腰掛けた。
「もうそれ以上ねこちゃんが考える必要はねエよ」
「どういう意味?」
ナターシャの方をみやって、それから央一は音々子を見た。
「一件落着ってことヨ! ネ、ナターシャ」
「お腹減っただけやろ、央一くん」
「そんなんじゃあねエやい!」
央一はぶうたれるが、ナターシャはふんと鼻をならして、またキッチンに向かった。
「まったくヒトを食いしん坊扱いして、失礼しちゃうワヨ」
「……」
「あれーねこちゃん元気-? ビョウキ-?」
「五月蠅いわね、考えごとしてんのよ」
「フフフン? 俺も考えごと。終わったケド」
にまにま。
音々子はそんな央一を爬虫類のような鋭い視線でギロリと睨めつけた。
「イヤンこわい。この高校三年間サ! 俺とねこちゃんで謎解き? 冒険? お祈り? ……ーー鎮魂! そうだそれ!」
「鎮魂?」
「そうサ! ねこちゃんの体質、天性だって」
「! な、何で知ってんのよ……」
「あれ、ねこちゃんも訳ありなのン? マアいいや。これからもきっとジャックや鶴子さんみたいな人達と出会うだろうと思うのよ。でもサ、俺は連中のために祈るよ」
「……」
「性善説じゃあないけど、人間の頃はいろんな縁があって業があって、一生懸命生きてたと思う。だから今は少しでも……」
「……」
音々子は央一の目に何かを見た気がした。
しかし、目をそらし、
「バカね」
「へ?」
吐き捨てた。
「バカ?」
「そうよ、バカだわ。アンタの存在風情が一人でどれだけ祈れば奴ら気が済むと思うのよ? ……私も、祈るわ」
「! ねこちゃん……ツンデレ?」
「五月蝿いわねっ!」
「イタイ!」
殴られた。
会心のこぶしを喰らった央一は腹をおさえ、呻いていている。
「今回の件で分かったのよ」
「な、なにが」
「いえ……まだ分からないのかも。だから祈るのよ」
「……俺たちにはそれしか出来ねエから」
「そうよ」
ナターシャはフライパンを操り料理を続ける。
(今に分かる、この町に何が起きて、どんな暮らしがあったのか。君ら二人は今に思い知る、あの丘で……)
「あ、白米炊いてない」
「マジかよナターシャ!」

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