(なんだ? どこからだ?)
『ヒュゥー…ゥ、……グボッ、ヒュュー……ゥ』
風だけではない。なにか蛇口から水が溢れ出るような音もする。
(一体何だってんだ!? 今更だけど、やっぱしオカシクねエかッ!?)
央一は振り向けない肩で振り向いてはいけない気配を察知した。
『グッボ、ゴボッ……ヒューゥガボッゴボゴバ』
ずるう、ずるう……。
背後からぬるりと央一より上背のある何かが現れた。
それは黒、いや赤黒いスーツで歩いている。
(う、わっ!!!!)
央一は辛うじて横目に見た。央一の目線に相手の肩があるのに、首の上には頭が無い。
グボッゴボッ、と聞こえるのは首から溢れる血液。
ヒューゥという風の啼くような音は微妙に残った喉の気管らしい。
『ヒュー……ゥ、ゴボッ』
ずるうっと脚を引きずるようにして歩いている、彼こそが首無しジャック。
(出た……! っていうか近ェッ)
央一はそのおぞましい存在感に圧倒されそうになる。だが央一はポケットの中に入れておいた最期のカギを握りしめ、感覚の薄い廊下の感触を今一度確かめた。

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