ボクらの鎮魂譚 - 51/66

「誰か、男に……」
「鶴子さん絡みだな」
「それはこの本に載っとっチャ」

 

 

《オリバー邸の最後は、花重綱の住民たちの手で下されました》

《たびたびの令に従い、オリバーとその仲間はその別荘を手放しました。ほとんどデモのような運動も起こっていたというくらいには嫌われていたということです》

《しかしその数年後オリバーの仲間の一人である動物学者、ジャックが戻ってきました。私物をこっそり取りに来たようだったと当時の住民の手記が残っています》

《ジャックの道のりは険しかったようでした。通年は時期が来れば日本海側から訪れられるものを、吉滝家が出禁にしていたためでした。東京からの回り道でありました》

 

 

「やっぱり、鶴子にはるばる会いに来たんだわ……」

 

 

《ようやくたどりついたオリバー邸はそのままに残っておりましたので、さっそくそこを根城にジャックは鶴子を呼び出したようでした。手紙は外国語のため、遣いの者には読めませんでしたでしょうが、これが証拠となってジャックを討つ算段が立てられたのでした》

 

 

「攘夷の時代ではないと思うんだけどナア。やっぱし田舎ってムゴイよネ、他所モンにはサ」

 

 

《手紙は鶴子には届かず、ジャックはオリバー邸にて首を討たれ、死亡。館の一室には、赤い箱に入れられた真っ青な宝石の首飾りがあり、真新しい様子もあいまって、ジャックの持ち込んだものと分かりました》

 

 

「……」

そこまで読んだ三人は、一様に黙り込んだ。

何がそこまで海外(うみそと)の客を許さなかったのかは、今となってはとんと理解しがたい。それこそ時代のさがというものに飲み込まれたのかもしれない話だった。

いや、まったくの他人事ではない。

これはこの町で起きたことだ。

もしかしたら、自分の祖父や曾祖父、親戚、友人の先祖、隣人の先祖も携わったのかもしれないれっきとした殺人だった。リンチだった。

「……これを知って、あんたらっちゃどうしたいガケ?」

ナターシャがもう一度二人に訊く。

「……」

央一は剥製のようにしずかに、しかし炎を瞳にたたえていた。ぎりり、と唇を噛む。

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