ボクらの鎮魂譚 - 50/66

ジャック。

「首無しジャックか……」

央一が呟いた。

 

 

《手紙を出しあう鶴子とジャックは、中身から恋人の一歩手前のような関係だったことがうかがえます。惹かれあっていたようでした》

 

 

「……恋人の一歩手前のような関係……」

音々子は思いがけず口に出して本を読んでいた。

「ねこちゃん、なに小難しいシイ顔しちゃってんの?」
「な、なによ。そんな変な顔してないわ……。ただ、あの男、ジャックがもし、まだ鶴子のことを想って彷徨い続けているのだとしたら、」
「同情したらいかん。取り込まれるガいぜ」
「……」

ナターシャにピシリと言われて、音々子はぐっと唇をかみしめた。

央一はふと、頭上に電球をピコン、光らせた。

「ってことはさっき言ってた、いわくつきのネックレスってジャックが鶴子サンに差し上げようとした私物だったりシテ? なにか証拠見つからんかネ」

ナターシャがもう一度資料の山から写真のページを開く。

「そやね。その首飾りはオリバー邸に最後まで残っていたもののひとつナガ。渡せずじまいだったんやろな………。オリバーが保管しとったんやろか」
「イヤ、そこがおかしいんだよなァ」

央一が耳の後ろを掻く。

「ナターシャにはまだ言ってなかったけど、ねこちゃん。俺らが見た異人館の幻、っつーの? あれどんな様子だった?」
「私たちがみた様子?」
「そう、この写真とちがうところ」
「そうね……、ボロボロの状態だったのは間違いないわ。窓は割れていたし、ドアももしかしたら蝶番が壊れかけていたかも。屋根もひどいありさまだった」
「なにかがあったんだよな」
「そうね、そこにジャックは逃げ込んだ」
「俺から逃げついたのは、あの館」

ナターシャはそれを聞いて、ハッと二人を見た。

「死んだ者がこの世に残る時、ずっと永遠にそこでやり直しをしとると聞いたことあっッチャ。もしそうなら、ジャックは誰か男に追いかけられてあのボロボロの館で死んだちゅー可能性もあるガね」

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