ボクらの鎮魂譚 - 5/66

あれはどういうことなのか、分からない。

説明してもきっと分かってもらえないだろう。

そう思って、このことは当人であるその女子生徒にも、保健室の先生にも言わなかった。

そしてもう一つ不思議なことに、突然ロッカー先で倒れた原因を、女子生徒は心当たりがないということだった。

央一が見たアレが夢幻でないならば、原因は首を絞められたことによる一時的な酸欠。それはきっと本当にあったことだ。

だが、証拠は目の前で消えてしまった。

例えば大きい病院に行って、彼女の脳の状態なんかを調べてもらえれば、何かしらの検査結果が得られるかもしれない。けれども、現在彼女は特に体調不良を訴えることもなく意識もしっかりしてきている。保健室の先生の勧めで既に始まっている五限の授業は休むようではあるが、一切の健康体であった。

「ありがとう。つれて来てもらって良かったわ。担任の先生には私からも言っておくから、もう教室戻っていいわよ」

「はァい、失礼しまーす」

何事も無かった。

それはとてもイイことだ。

イイことではあるが、終わり良ければすべて良し、という気分にならないのは何故なんだろう。

(気のせいだったのか……?)

保健室の扉を後ろ手に閉めた。廊下の空気がやけにひんやり感じる。

校舎の一階というのは立地上、何となく薄暗くてじめっとした空気がある。何だか不気味に思えて、央一は急ぐわけもないのに階段をダッシュで駆け上がった。

「阿僧祇、遅刻の上にその靴……!」
「あ、アレェッ!?」

そして上履きの存在を思い出すのであった。

「廊下に立ってろ! 減点だ!!」
「エェ~……」

先生、職権乱用ですヨ……。

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