ボクらの鎮魂譚 - 49/66

「まァ、イイけどね。……でも、ターゲットは? そこを忘れちゃあダメダメよん?」
「ターゲット……。ターゲットは若い黒髪を垂らした女。……それはこの令嬢? でも殺したいわけではない……」
「うん、むしろネックレスを差し上げたいくらい愛していた」
「そう、殺すわけがない。……つまり、黒髪のターゲットは、……――! みんな生きているわ!」
「ソウデショウ!」
「せいぜい気を失う程度だった!」
「そう! そしてもうひとつ!」

央一は立ち上がる。

「俺から奴さんが逃げる理由。それは――」
「それは……?」

バン!

と、ナターシャが叩きつけるように、机にある本を広げた。

「あったガいぜ」
「でかしたナターシャ!」

 

 

《オリバー邸の人々》

《オリバーと友人たちは日本海と立山連邦の雄大な景色を好み、たびたびこの別荘を訪れました。山と海に同時に囲まれたこの地形はさまざまな動物にもめぐまれ、オリバーたちは研究、趣味としての狩猟もしばしば行っていたようでした》

《趣味としての狩猟は花重綱の人々にはよく思われてはいませんでした。この邸宅に訪れるものも少なかったようです》

《しかし一人の若い娘だけは違って、このオリバー邸に客として招き入れられていました。吉滝鶴子(よしたき つるこ)、才女でした》

《けれども、じきに訪れることもなくなっていきました。吉滝は地元の有力な貿易商としても、さらには語学の塾としても有名であったため、吉滝氏に鶴子は訪れることを止められたのではないかといわれています》

《特に鶴子と懇意にしていたのは、動物学者の男でした。正式な名前は現在残っておらず、もしかすると職業を偽っていた可能性もあるかもしれません。鶴子は、ジャックと呼んでいたことが手紙に残っています》

 

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