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「いいから黙って喋りなさいよ」
「ギャフン! ねこちゃんどっちよ!?」
黙ってビンタされた。
「う……、俺が思うにだな、この紳士は吉滝の令嬢に好意を寄せていた」
「そうかしら?」
「とりあえずそうしといてチョーダイ。だから殺してはいない。なぜ首絞め魔になって現代にも残っているのか、それはそこに理由があると思う」
ナターシャが違う資料を開く。それは全頁多色刷りの、博物館の図録だ。
「ここガにオリバー邸取り壊しの際に寄贈された服飾品、食器、絵画、ほかにもいろいろ。金持ち道楽の末端が覗ける展示のカタログヤチャ。この中にいわくつきのネックレスがあるガ」
「ネックレス……! それだ!」
央一は興奮した声で図録を見た。
ナターシャは央一の意図をくんだように、問題のページを開いた。
そこには真っ青の石が嵌め込まれた大ぶりの首飾りが仰々しく載っていた。
「これはでも、オリバーの秘宝じゃあないガ」
「オリバーの物ではないの?」
「いや、それは問題ない! オリバーの物でなくてもいい、それは関係ない!」
央一は強く言い放つ。
「聞いてくれ。その紳士、すなわち首絞め魔の奴さんは悲恋の死を遂げた。だから現代にまで遺っている。その相手は吉滝のご令嬢。ここまではオーケイ?」
ナターシャはこくりと首を動かした。音々子の反応はないものの、しっかりと央一の方を見ていた。
「生前その男は吉滝のご令嬢にそのネックレスを差し上げたかった。恋心からな。もしくはプロポーズかもしれない。でもそれは叶わなかった。なにかの問題に直面したためだ。なにかはわからないが、そのままこの地で客死した。そして思い出の地のここに今も死んだまま生きている」
「ちょっと待って」
音々子は眉をずっとひそめたままだったが、ここでやっと声を上げた。
「アイツには首が無いわ。首が無い、それはどんな理由があるっていうの?」
「うーんん、これも推測になっちゃうけどナ」
喉仏の前をチョン、と央一は水平にした手をあてた。
「死刑。奴さんは誰かの、何かの刑に触れ、首を刎ねられた」
「……」
納得がいかない様子だ。音々子はあごに手をあてて、考え込み吟味するように、資料に目を落とした。
「首が無いから、……恨みつらみで誰彼かまわず首を狙う……?」
「コーシチカ、この男の死刑だったという証拠が見つかればいいガね?」
ナターシャは央一にも目を配らせて、また書棚に向かった。
書棚に消えていったナターシャを見送って、央一は不敵に笑みを浮かべながら音々子を見守っている。
「……首、ネックレス? わからないわ。なぜアイツは首をしつように狙うのかしら」
「聞きたい? ねこちゃん、俺の話」
「五月蝿いわね。今考え事しているのよ!」
フフフンと鼻で笑うと、央一はいすにずっぽりと体重をあずけ、いすの前足を浮かせながらくつろいだ。

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