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「……幽霊が見えるわけじゃあないけど、あの首の無い男を追っているだけよ」
「おらはあの男を知っとるヤチャ。おらっちゃもこの学校の卒業生ナガ」
「! そうなの?」
「そうナガ」
三つ編み司書はよく見ると瞳がエメラルド色をしていた。メガネをかけ直した。
「ちょっこ前だけど。おらも通ってたチャ。でンも、旧校舎の時ヤチャ」
「……あなた、ハーフ?」
「そうヤチャ。……クォーター? 言うんガケ? ロシアのばあ様がおったガ」
そう言いながら司書は自分のおさげを見せた。銀髪にも見間違えるほど、色素の薄い髪だ。
「そんなガどうでもいいガ。あのっさん(あの人)がことヤチャ」
思っても見ない援軍に央一はニヤリと口の端を歪める。
「でもアンタ、奴さんが見えるってわけじゃあないんだろう?」
「見えル。でもおらは標的にはならんがいチャ」
「ヤハリな」
「……それは知っとんガケ?」
「ああ、そこまではナ」
「あのっさんをどうすんガ?」
央一と音々子は互いに顔を見合わせた。
それから司書の方を同時に見た。
「「止める!」」
三つ編み司書は少し目を細める。
「アンタらっちゃ、勇気あんがいね(勇気あるのね)……」
「そうかね?」
「普通じゃあない?」
はて? とした顔でまた二人は顔を見合わせた。
「まあいいがいね。これからどうすんガケ?」
「え? まずはあの異人館を調べるわ」
「異人館?」
「そうよ、学校の裏の林の中にあったの。アイツを追っていったらあったのよ」
「追って?」
央一は気のせいかと思うほどの小さな笑いを聞き逃さなかった。
「なあにしとんガ。ほんにあんたらっチャ、おかしな人がいね」
「なっ! おかしくないわよっ!」
司書は口元に人差し指をあてた。ハッとした顔であわてて音々子は口を閉じる。
「いいがいねいいがいね、若いモンはそのくらいで」
「見たところおネイさんも若そうだケド?」
「おらのことはいいガ。ちなみに名前は?」
央一と音々子はそれぞれ名乗った。
「おらっちゃは盤若原ナターシャ(はんにゃばら なたーしゃ)。お面の般若とは字ぃちごとる(字が違う)」
「ナターシャね。かわゆい名前だコト」
フンと鼻で笑うように息を吐くと、ナターシャは奥の本棚から一冊の本を持って来た。

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