ボクらの鎮魂譚 - 40/66

「……新校舎増改築決定にあたって卒業生のことば。どうでもいいわね」
「ちょっと待った、ねこちゃん!」

直接関係ないと思われたそのページに、央一が何かを見つけた。

「何かあったの!?」
「当時の写真を見ろ……」
「え?」

その卒業生はもしかしたらもう存命では無いかも知れない。写真は白黒で、能面のような表情でポーズをつける卒業生たちは過ぎ去った時代を感じさせた。

「野郎しかいねえぜ! なんてこったい!!」

央一は頭を抱えて悔しがる。

「何を期待していたのよッ! バカじゃあないの!!」
「図書館では静かにしくださイ」

司書に諫められ、音々子の目付きが鋭くなった。

「アンタのせいだわ」
「それはわるぅゴザンシタ」

ペロッと舌を出した央一。
そこに追い打ちをかけてさらに仕留めんとするような音々子の視線が突き刺さる。

「……でもこの写真、これは制服よね?」

音々子が薄いピンク色の爪先で写真の男子を指した。

「アー、この時も学ランだったんだな。黒っぽく映ってるけど。帽子もかぶってるな」
「そうね。こっちは担任の先生かしら」
「……奴さんじゃあねえな」
「そうね……」

写真の下には活字で卒業年月日が記してあった。

「ここは関係なさそうね」
「そうだな。学園の創設者のページは?」
「目次を見ましょう」
「ハナからそうすりゃあよかったべな」
「おだまり」

コソコソと話しながらページをごっそり前にもどす。

央一が目次とにらめっこ。

「……ここは? 有薗正二郎翁の系譜 有薗望港学園の歴史と近影」
「見てみましょう」

央一と音々子がそうこうとしている間、司書は見張るでもなく、さきほどの本を読んでいるようだった。
たまに眼鏡の奥からきらりとした視線を送っている。

「なかなか目当ての資料がないわね……」

学園の歴史辺りを漁っていた音々子がついにタメ息をこぼした。
「そういえば、ねこちゃん」
「なによ? っていうかその呼び方やめなさいよ」

央一もちがう列の棚を中心に首無し男の正体を掴むための探索を行っている。

「あのサ、昨日の奴さんを追いかけている時、ねこちゃんは何を見ていたんだい? もしくは何を考えていた?」
「……」

本と棚の隙間から音々子の少しうつむいた頭が見える。黒いが、昨日の異人館の窓の中の闇とは違う。生きた黒だ。

「私は見たのよ」
「? なにを」

音々子はきゅっとくちびるを噛んでから、顔を上げた。

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