倒れている。
倒れているのは、女子生徒。先ほど走り去って行ったばかりのあの女子生徒だ。
あまり大きな声では言えないが意識を失っているらしいがために、丸出しになっているこの有難い淡いピンクの下着、所謂パンモロ。これは運動場用具室で最後に見たパンツだ。ほんの数分前のことでもあるし、あとはまあ、いろいろな要因があって覚えがあるこのお尻。
間違いない。
間違いない。
が。
とにかく、女子生徒は左半身を下に、横倒しの格好で倒れている。パンモロで。
(何で――?)
体調不良ではないだろう。さっきまで走っていたことだし。突然の心筋梗塞なんて歳でもないだろう。何かに蹴躓いて倒れてしまい、当たり処が悪く失神もしくは脳震盪……の線でもなさそうだ。それならそれなりの派手な音がしそうなものである。血も出ていないようだ。
(とにかくこの状態を何とかしよう、そうしよう。誰かにこの説明しづらい場面を目撃される前に、だ)
央一は不審な倒れ方をしている女子生徒に関わることを腹に決め、とりあえずスカートの裾の位置を直してやることにした。そォ~っとつまんで、お帰りいただくパンツ様。
「もしもォ~し? 生きてますゥ~?」
反応は無い。
コレ、起きなかったらどうすればイイのん?
「ヘイ、ハゥアーユーガール?」
そこへ本鈴が降ってきた。
これはちょっと自分だけじゃあどうにも出来そうもない。もうしょうがない、保健室に連れてっちゃおう。
「持ってけるか……? ゥいしょッ、と」
世に言うところのお姫様抱っこというヤツである。この格好で保健室へ向かう。
央一もこの急患も、靴がお外用だけど、緊急事態だからおおめに見てくれるでショ。ということでこの校舎の一階にある保健室へ土足のまま上がることにした。いつもと違う廊下の感触を足元に気を付けながら踏み進む。
「んぅ……」
「あ、あれ。起きました? お姫さん」
「え……きゃ、な、なんで!?」
保健室手前くらいで、眠り姫の起床。
「……?」
しかし不思議なことに意識を取り戻した央一の腕の中で、彼女の首筋の鬱血痕は跡形も無く消えていた。
まぶたを開けたナ、と思った瞬間にすぅっと、何かの冗談のように目の前で消えていってしまったのだ。
「……」
「な、なに?」
「え、あ、いや。目覚ましてヨカッタナってね」
「……あ、ありがとう」
保健室の先生は央一の急患に関する状況説明を聞いて、すべて信じてくれた。そして手早く彼女に外傷がないか調べてくれた。軽いコブが頭に出来ていた程度で、将来に関わる大ケガなんてのは発見されなかった。ヤレヤレこれで自分もお役御免になる。
でもあれは言えなかった。
不思議と消えてしまった、おそらく唯一の首を絞めたであろう犯人の手掛かり。

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