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「失礼、司書さん。この町の歴史を調べたいのだけど、どちらに行けばいいかしら?」
階段から上がったすぐそこに、まるで百貨店の案内嬢のように司書がいた。ただ違うのは、その案内嬢、もとい司書の女性は金髪おさげで結構目立つカッコウの割に気薄とでもいうのか、存在感が儚げであった。
丸めがねをかけ直して音々子を見やる。
「この階ではありませんネ、五階の特別書庫でス。借りられませんヨ?」
「構わないわ。私たち学生でも閲覧できるのよね?」
「えエ、もちろン」
それだけ確かめると音々子はきびすを返して階段を再び上り始めた。央一も続く。
「ゲエーッ! 五階まで階段かよ!」
「仕方ないじゃあ無いの、特別書庫は一般用のエレベーターは通じてないんだもの!」
無駄口に体力を消費しながらも若者は五階を目指す。若者なので訳もなく到着する。
ところが、
「こちらですヨ」
先ほどの司書が待っていた。
「……どうも」
汗だくの二人は朦朧とした頭でどうやって先ほどの司書コーナーの中で悠々と本を貪っていたこの人が自分たちより先にここに立っているのか考えた。
司書は三つ編みを垂らした頭を傾げて「どうしました」と訊ねるが。
二人はかぶりを振って気を取り直す。
「江戸時代以降……かしら、そのあたりの民俗、文化、調べたいの」
「そんなガ……、それでしたラ」
どうぞ、というように音々子と央一を奥へ招いた。
書棚は央一の背丈ほどもあり、それらがズラリとマネキンの群れのような静けさで二人の瞳孔を見守っている。
「このあたりがそうでス」
三つ編み司書が立ち止まった。
「資料は大切ニ」
ぺこりとお辞儀して立ち去っていく。
央一と音々子は司書が立ち去ったと同時に並ぶ本たちに視線を移した。音々子は深呼吸。
「さあ! ここからが問題よ。まずはあの洋風の建物がなんなのか、洗いざらい調べるのよ」
「お、おう! ……つってもよォねこちゃん? 学校の歴史を調べたらそこんとこわかるんじゃあないのん?」
「……」
すぱん!
「イッダ!」
央一を平手打ちの後、音々子は隣の棚へ回り、1冊の分厚い革表紙を持って戻ってきた。
「さあ! 調べるわよ!」
「う、うん……」
その本は有薗望港学園のあゆみを記録したもので、校舎の建て替えが決まった頃に刊行されたもののようだった。
比較的新しいらしく、整理番号のシールもカバーもぴかぴかである。
音々子は無造作にページを開いた。

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