ボクらの鎮魂譚 - 32/66

美少女フィギュア系美少女は持ち前の美脚をただ走らせているわけではないらしい。が、もう第二校舎を出る、渡り廊下が見える。一本道の廊下を横から、その出入口が暮れ始めの光を差し込ませている。

「奴さんがどこにいるのか分かってンの?」

やたら気負った脚取りでやって来たのだが、何の確信があってここまで来たのか、央一にはとんと分かっていなかった。渡り廊下は屋外だ。外に出ればあの男を見失ってしまうだろう。

「外出ンの?」
「――いいえ」

渡り廊下口の手前でやっと音々子が止まった。上履きがキュキィッと鳴く。

「いたのか?」
「五月蝿いわね。静かにしなさいよ」

怒られてしまった。

もうこの女子高生が何考えているのか全然分からない。異国のジェスチャーのように肩を竦めるしかない。

「……ターゲットになりそうな、女の子を探しているのよ」

出入口ドアの縁から我が国一有名な家政婦さんのごとく辺りを覗いている音々子。

突然立ち止まったのは、動かないためだ。

「この辺にいるのか……?」
「それは私も分からないわ。でも、賭けよ」

音々子が、言うことが何となく頭で理解できるようになってきた。

どうやら音々子サン、例のシンキングタイムが無い時は、目の前しか見えない猪突猛進な考え方になってしまうようだ。いろいろと説明がないので、これじゃあフツーの人は彼女が何をしたいのかちんぷんかんぷんになってしまうだろう。

そして、結局彼女が何をしたいのかと言うと、

「待ち伏せを、するのよ」

(っつってもよォ、うまくいくかネ……)

あの幽霊男は、外に出なくても、自分の姿を消すことが出来る。央一と音々子の証言を擦り合わせて公式で解くとそうなる。

(きっと奴さんは、ウロウロしながらターゲットを探してる。この廊下を歩いてくる)

結構な速度で向うの空き教室から飛ばして走って来たので、もしかしたらあの幽霊男を追い越して来たかもしれない。……知らないうちに、踏んだり蹴ったりしていたかもしれない。姿が見えないだけに。

(それは勘弁だぜ……)

央一は気味の悪い自分の思い付きを、首を振って頭から追い払った。

ほどよい女子生徒は幸か不幸か(圧倒的に幸だろうが)、まだ通りがかる気配はない。

「ねこちゃん、気のせいじゃあないンだな……」
「気のせいなら、その方がイイわよ」
「なあねこちゃん、本当に、」
「つべこべ五月蠅いわね! いたって言ったらいたのよ!」

ぷんぷんしてる黒色のつやつや頭。

(あー、怒らせちゃったかなア)

廊下を振り返ったり、外を覗いてみたり、忙しないぞ。

「もしかしたら、あっちの校舎に渡っていったのかも知れないわ。アンタ見てきなさいよ」

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