ボクらの鎮魂譚 - 30/66

と、その時、チャイムが聞こえて来た。

「アンタがふざけてる間にこんな時間だわ、まったく」

色白の細い手首に着けた腕時計を指して、ぷりぷり美少女が怒る。

「え、マジ? これ何時のチャイムだっけ?」
「四時半よ。もう夕方よ」

チャイムの余韻が完全に消えるのと音々子のため息が霧散するのと、ほぼ同時であった。

確かに窓の外には影が伸びて来ていて、全体的にワントーン暗い印象の風景になっていた。元気な運動部の掛け声は相変わらず絶えないが、校舎脇の植樹の合間からかろうじて見える焼け始めた空が、物悲しいように思えた。

「……帰りマス?」

何だか興が削がれてしまったような気分だ。田舎町の夕焼けは余計ノスタルジーを駆り立てられる。と言ってみたものの、央一は生まれてこの方中学の修学旅行以外でこの町を離れたことは無い。ちなみに小学校の時は加賀百万石の領地内だった。

「ねェ、ねこちゃん?」

起き勉派のバッグを机に置いて、準備万端ヨ、帰っちゃうヨ、というアピールを見せる。

「…………ねこちゃん?」

しかし音々子はまだ思索の霧中なのか、返事がない。

「…………オーイ?」

ふと彼女の顔を見ると、顔は真正面で央一と平行にがっちりと合うのに、深淵の黒い瞳は央一の顔を避け、肩を素通りするのだった。

「もォしもォーし」
「…………アイツだわ」

央一は息を呑んで、振り返った。

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