《襲われるのは、何故か必ず女子。(←まだ理由は定かではない)女性教諭が襲われる例は現在は聞いていない。被害者の特徴としては、長い髪を垂らしていること》
(フフフ~ン、同意。だけど――)
「ねこちゃん、被害者の項目について俺も考えることがあるぜェー」
はいはーい、と央一が挙手する。いすに座った黒い長髪のつむじよりはるかに高い位置にある手のひらを見て、音々子はひくりと眉を動かした。
「何かしら」
「被害者の特徴は、長い髪を垂らして、歩行中であること」
「……それは何故?」
「ねこちゃんは職員室前のガラスケース傍にいた。襲われた茶髪のあの娘はその廊下にねこちゃんより後から現れた。そして奴さんはいつ出現したかは分からないけどもそれは置いておいて、後から現れたあの茶髪っ娘を追った。その被害者とねこちゃんの違いは?」
顔の横まで下ろした右手で5、4、3……とカウントダウン。音々子はまたしてもほんのちょっと目を眇めてから、ちらと央一の顔を盗み見た。
「……動いていること?」
「ぴんぽんぴんぽーん! といきたいけどンも、七割正解ってとこネ。俺が思うに、歩いてなきゃダメ。空気が流動していなければ、多分ダメ」
「空気が流動? 歩いている時のあんな微かな風がターゲットを絞るのに必要なのかしら?」
「それ言っちゃったらだーいぶ答え出てるモンよ、ねこちゃーん?」
ぴっ、と顔の横の手を人差し指だけ立てた状態で止める。
「ねこちゃんには俺から言ってなかったけど、奴さんが現れる時、必ず風が起きる。それが関係してると、俺は踏んでる」
あの男が現れる時の嫌な感触をまとった風。よく心霊特集番組とかなんとかで言われる生ぬるい空気の一種と思っていたが、それにも兼ねて、おそらくあの風であの男は有機物と無機物、男と女、髪の長い短いを識別しているのではないか。央一はそう言いたかったのだ。
「……それは何のために?」
「ビコーズ、ターゲットを絞る!」
「全部英語でいいなさいよ」
「無茶振りイヤーン」
「……」
「あだっ、音々子サン痛いですッ」
ふざけると、飛んできますよ、ボールペン。
音々子にボールペンを投げつけられた。しかもペン先の方からビュンと目の高さでやって来たので、避けそこなった。
「まだあるンですよ、聞いてくれます?」
「余計な茶々入れないなら許可するわ」
「そりゃあどうも(変な茶々入れてきたのはねこちゃんじゃーん)」
央一は若干赤くなった額をさすりながら、意見を続けた。
「そしてターゲットは、必ずゆっくり歩いていなければならない。これは単純に」
「アイツが追いつけないから」
央一のセリフに音々子が結論を被せた。央一が頷く。

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