ボクらの鎮魂譚 - 27/66

「……俺は今日の昼休みも運動場用具室にいたけどンも、奴さんは見なかったな。原因不明で倒れちゃう女の子も見なかった。でもパンツは見た」
「……」
「報告終わりデス」
「……あそ」
「ね~~ェ、冷たくないですかァ~?」
「報告は必要なことだけでいいのよ」

ズバッと切り捨てられた。次は音々子の報告だ。

「まあ、かく言う私もそんな有力な情報は、今日も得られなかったわね。犠牲者が出なかっただけマシだと思いましょ」
「それだけ?」
「ええ」
「……」
「……」

息巻いた割にはあっさり終わってしまった。

用事が終わると特に話すことはないものだ。沈黙が大行列を組んで目の前を流れていく。

改めて考えると不思議なもので、二人は別に旧知の仲でもなく、何か趣味が合うでもなく、仲良しこよしでもない。

「でも何もしなかったわけじゃあ無いわ。これまでのことを整理してみたの」

そう言って音々子は広げたばかりのその手帳を、前のページへ捲った。

「これまでのあの男に関する情報をまとめたわ。見て」
「ほう」

平均的な女子高校生の掌の大きさに合った、央一には少し小さめなその手帳には、音々子のやや神経質な人格が乗り移ったような細かい字がぴっちりと並んでいた。びっちり、でないところが彼女の「分かりにくいものは気持ち悪くてキライ」というような性格が出ている。

「これが俺とねこちゃんの、アイツについて分かっていることのすべてか」
「そうよ。憶測によるところが多いのが正直なところだけど、何も無いよりはいいでしょう」
「グッドグッド」

央一がその細かい字を「フフフン」と目で辿って行く。

内容はこうだ。

《まず、あの男は世に云う“怪奇現象”、即ち幽霊である。これを前提にしないとこの事件がまったくの迷宮入りになる》

この件に関しては央一が言い出したことであるので、「フフフン」と読み飛ばす。次。

《その彷徨える男の幽霊は、生きている人間に危害を加えるという点と、一定の場所にしか現れないという点で、地縛霊と呼ばれるものと思われる》

「……ねこちゃん、この一定の場所ってェのは?」

気になったので訊いてみる。

「一定の、アイツが動き回れる場所に制限があるように思ったの。有薗望港学園敷地内っていうのが第一条件として、更に私が考えたのは、屋内に限る、ということよ」
「ハア」

言われてみれば、今まで央一が見てきた事件現場は、必ず校舎の中であった。

「んー、今のところはそうかもネ、再考の余地はあるかもだケド。でもでも、首を絞められる被害者は全員女の子ってェのは? そこンところ何かある?」

「それはこの辺に書いてあるわ」

薄ピンク色の爪が、とんとん、と央一の手の中の紙面を叩く。示す部分に目を移してみる。

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