ボクらの鎮魂譚 - 26/66

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第二校舎は主に三年生のための教室が組み込まれている建物である。

ほかに、実験室だの美術室だのといった実技的な教室もある。三年生が使う校舎、というイメージが強いのは、進路相談室があるからだろう。進学、就職のための資料室なんかもある。

盛り沢山な第二校舎ではあるが、さすがに教室を作りすぎてしまったのか、それとも地域の子供が少ないためか、スタンダードな座学用教室は階まるまるからっぽだったりする。

「学校探検た~のしィ~っ。こういう田舎のフリーダムさがス・テ・キ!」

「まあ、つい最近まで100%木造校舎だったらしいからね。抜け切れてないんじゃあないかしら、相変わらず無防備なものだわ」

新一年生のクセに、結構勝手している。

央一はマーマレード風味のブッセをもしゃもしゃと食い散らかしながら、好物の黒ゴマ牛乳をすすっていた。

「空き教室でこーんな格好でこーんな旨いモン喰ってもオゥライヌォープラォブレ~ムなァんてさ。俺、明日から不良に転職するワ」

「馬鹿言ってないで今日の報告よ。それからそのとっ散らかったアンタの汚らしい食べカス、ちゃんと片づけて帰りなさいよね。あとコレ、お行儀が悪いわ」

「へーいへーい」

音々子にビシッと指差されて睨まれてしまったので、机の上から組んだ長い脚を下ろした。

しかし、音々子は更に眉をひそめることになる。上履きから派手な蛍光紫のくるぶし靴下がちらりと目をかすめた。

「……そんな色の靴下、どこに売ってるのよ。趣味悪い」

「あーッ、ヒッデェーッ!! ねこちゃんの今日の赤バラレースパンツの方がどうかと思いますけどォ~?」

「こンの……っ、いつの間に見たのよ!?」

「ここに来る前、渡り廊下でたまたまネ」

バッチンと特大のウインクを贈って差し上げたが、美少女フィギュア系美少女は婆娑羅神も泣いて逃げるほどの表情でウインクを封も開けずに返品してくれた。

よくよく考えれば渡り廊下を渡ることになるのも、渡る時間帯も、音々子に場所を指定された時点で計画立てられるのだ。チャンスは必ずものにする男、阿僧祇央一である。

「今日と言う今日は――――、チョン切ってやるわ!!」

「ハイハイ、ストーップ。成敗するのは俺じゃあないデショー? ってゆーかどこをチョン切るつもりなん……いや、やっぱ言わなくていいデス」

音々子は今まさに自分の筆箱からはさみを取り出さんとしている。本気か冗談か判断しにくい。

「ま、マジメにやるぜ俺は! マジにマジメにマジックショー!! ホラ、ヘーイ!!」

適当な言葉を並べて適当にハイタッチを求める。

「……意味分かんないわよ」

音々子はため息を吐きながらはさみをしまってくれた。毒気を抜かれたのだ。

「あれ? ねこちゃーん、タッチしてくれないの?」

「触りたくもないわ」

「あらヒドイ」

とりあえず九死に一生を得たようである。

「ままままあ、本気で真面目になりますよ」

二人は気を取り直して、とりあえず近くのいすに腰を落ち着けた。どこかの委員会の書記担当のように、音々子は自分の手帳と愛用のシャープペンを手にしている。央一は机の下に収まりきらない脚を大股開いて座り直して話し始めた。

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