第二章 真・校内探検隊
目撃者はきっとこの世に二人しかいない。
「……」
「なァねこちゃーん」
「……」
「……音々子サン」
「何かしら」
聞こえてる、絶対聞こえてる。わざと返事しないのだ、この女。央一作ニックネームがお気に召さないらしいのは承知の上であるが、最近は逆に反応が面白くなってきてしまって、この自作のニックネームを央一は使い続けていた(今回のリアクションは、金平糖を噛むがりぼり音が一瞬途切れる、であった)。
「今日はナンかありましたァー?」
「いいえ、今日も見かけてないわ」
「俺もォー……」
あの男は毎日現れるものではないということが分かって来た。毎日なんか現れたらそれこそ大変なものだが、そうなるとこちらの気が変になりそうだ。
と言うのも、チーム体制を敷いて情報を共有し合い、二人掛かりで学校を見張り始めて一週間と少しが経つ。その間、あの男は一度も姿を見せなかったのだった。ずっと気を張っているにも関わらず、望んだ結果が得られないことほど疲れるものは無い。
日々の授業は退屈この上ない、まこと平和。
牧歌的ともいえる春の真っ最中は、丘の上にある学校として風光明媚であった。
ちょっと前までは木造だった校舎だからなおさら、地元の画家はよくキャンパスを広げていたものだった。
丘を登る校門までの道筋には桜並木、背景は青い空に青い海、そしてはたらく白い船。反対側から見れば、小高い丘に時計台のある校舎、桜、地元の人間が愛してやまない立山連邦の雄々しくも麗しい姿を拝見できる。
風は羽毛布団より軽く、あたたか。
「ふわぁ……」
音々子ですらあくびするこの陽光。
「はあ、俺、この町、好きだなあ」
央一はしみじみとじじ臭いことを宣(のたま)う。
遠くでとんびが鳴いている。

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