ボクらの鎮魂譚 - 22/66

「あの、ですね。ボクはそこでボクの趣味を遂行していまして、あの、誓って言いますけど、渡り廊下付近に来たのは今日が初めてデス」
「そう、それで?」
「……それで、」
「何で今まで来たことのない所に、今日たまたまやって来たのかしら。何の用があって?」

音々子サン、仁王立ちで腕組しないで下サイ、威圧感がおっとろしいことになってマス……。なんて央一の祈りは既に届かない。

ぐっと丹田を引き締め、覚悟を決める。

「ちょっと探検に。ここまで遠征して来たのは初めて、これは本当」
「じゃあ、どれが本当じゃあないのかしら」
「ぐっ、……いちいち揚げ足取ってたらキリが無いデショねこちゃーん?」
「要領得ないことしてるのはそっちでしょう」

それもそうである。

央一は数秒前に決めた覚悟を、もう一度握りしめた。

「それで通りすがった俺は、この渡り廊下の下で立ち止まった! 何故なら気付いてしまったからだ!!」

どんな感情の昂(たかぶ)りがあって活劇の独白調の喋り方になったのか。音々子は眉を少し顰めたが、それだけで、央一のその独白にはツッコまなかった。

「それでね、あの地点から斜め上を見るンです。俺の身長で。そしてこの渡り廊下二階はとんでもない欠陥欄干造りになってまして、で、そこにミニスカートが、通るでしょう?」

今度は調子を下げて、訪問営業販売サラリーマン風で語り始める。しかし学ランを着たこのサラリーマン風口調の男は一向に音々子の目を見て話そうとしない。ずっと視線を合わせないようにくるくると黒目を泳がせている。

この男はつまるところいったい何が言いたいのか、と音々子は訝しみ、顔が険しくなる。

「そうするとね、……見えるんです。スカートの中が」
「……」

(ああ……っ、言ったぞ、言っちゃったぞ俺は…………ッ!!)

央一のTシャツの背中側は、もう変色していることだろう。汗で。

直接の単語は伏せて告白したが、これはもうおまわりさん相手だったら手首にカシャン、とされるレベルのところまで言ってしまった。

「……それがアンタの趣味なわけ? さっきそう言ってたと思うけど」
「……ハイ、間違いありませヌ」
「……」

音々子はまたしても黙り込む。

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