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渡り廊下。
第一校舎と第二校舎を繋ぐ、二階建の廊下。しかし実態は、屋外通路である。そこを渡るためには『校舎から屋外へ出る』ためのドアを開けなければならない。
「……まあ私も今日初めてこの廊下を使ったのだけど、吹きさらしで、有り得ないわね。何のために新校舎を建てたんだか理解に苦しむわ」
第二校舎二階廊下の現場から数メートル程度だが大事なロケーションのひとつ、その渡り廊下に二人立っていた。
「……そーネ」
音々子と共に現場検証を真似(まね)た、事実確認的なことを流れでやることになったのだ。
……カワイイ女の子とお話するのは別段構わない、むしろウェルカムなのだが、この地蔵ヶ谷音々子という人間は包み隠さず言ってしまえば、ほとほと面倒くさい人種であった。
「美少女と放課後校内デートの何が面倒なのかッ! 贅沢(ぜいたく)な悩みをッ!!!」とお叱りを受けそうなものである。しかし、とにかく言葉遣いがまぁーっっっっっったくカワイクないのだ。それから彼女、音々子自身が気に入らないと思ったものは、すぐさまこのような調子で口撃する。特に央一に向けて言っているのではないと頭では分かってはいても、心臓がキリキリキリプスッ……という具合にやられてしまうのだった。
「そして、アンタはあの辺に突っ立っていたのよね?」
「あーそーそーあの辺あの辺」
「適当に流さないでちょうだい、まだ疑いは晴れてないのよ。私の中ではアンタは容疑者②なんだから」
「げッ!? うっそンッ!?」
「あと、ふざけないで」
「…………ふざけてないモン……」
「何か言ったかしら?」
「……ィィェ」
こういうことなら、もう誰でもいいから、そのへんうろついてる教師なんかにあの被害者の女子生徒を押し付けて、警察沙汰にでもしてしまえば良かった。そうすれば、この小うるさい女子高生の事情聴取もプロの高血圧なオジサマたちがやってくれるのに。と、今更ながら後悔の念が真冬の日本海の波のごとく央一を襲ってくる。
とは言っても、おかしいと思ったものを素直にそこでおかしいと叫ぶことが出来る、音々子のその性格はとても分かり易い。そこらの人間とはちょっと違った良い意味での特徴だった。それだけはありがたい。
(マジメに腰据えるか……)
美しい黒髪をしゃらしゃらさせながら音々子は辺りを観察している。央一も思うことがあったので、……別に、今までふざけていたわけでもないが、本腰を入れて捜査をすることにする。
「ってか、聞きそびれてたんだけど、ねこちゃんは犯人の顔見てないの?」
「……」
「…………音々子サンは、犯人の顔を見ていませんか?」
「見ていないわ、覚えてない」
(クッソ負けねェ……負けねェぞーォ……!)
すっかり彼女のペースに乗せられている。このマイペースさもコミュニケーションの取りづらい原因である。
「でもサ、後姿くらい見てるでしょーに? 何かこういうカンジの男だったとか、背丈とか、何でもいいんだけど……何かありまセン?」
諦めずに食い下がる。

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