■シェアハウス梁山泊・庭(夜)
神山かぐや「一本制で負けたものはこのシェアハウスを去る、というルールのもと決闘を開始しますわ」
私はストレッチをしながら巳雪矢をうかがった。
巳雪矢はだらんと両腕を下げ、ジャンプして体を慣らしている。
日比野八重(この勝負、負けられない。私の美学にかけても……)
日比野八重(でも……もしこの決闘がなかったら、)
日比野八重(私たちはシェアハウスの暮らしで分かり合えることはできたのかな?)
神山かぐや「それでは両者位置について」
日比野八重「はい!」
巳雪矢「……」
神山かぐや「はじめっ」
巳雪矢は一瞬で間合いを詰め、蹴り上げを繰り出してきた。
私はそれを避け、足払いをかける。
巳雪矢「……」
日比野八重(相変わらず何を考えてるか分からないな、この男)
日比野八重(でも、筋は読めている!)
日比野八重「せいっ!」
■シェアハウス梁山泊・庭(夜)
【巳雪矢】※巳雪矢視点
日比野八重「やあっ!」
八重が鋭い正拳突きを放つが、その筋はもう読めている。
巳雪矢(いい突きだ)
巳雪矢(それにこの目つき。あれから変わらないな)
巳雪矢「オラァッ!」
日比野八重「ぅぐっ」
俺の拳が八重の脇腹に入りかけた。
しかし寸でのところで身をひねり避けられる。
巳雪矢(反射神経、脚力、体幹、文句ない)
巳雪矢(あこがれたんだ、俺は、その強さに)
巳雪矢(俺の喧嘩道、究めてみせる……!)
さらに八重は捩った流れで上半身を低くして、俺の顔面を狙って上段蹴りした。
巳雪矢「ぐっ」
巳雪矢(このヤロ……!)
加賀城マリ「やっちまえ八重ちゃーん!」
星双葉「言葉が汚いよ、マリさん」
巳雪矢(ギャラリーは楽しんでるだけだ、アホらしい)
巳雪矢(俺だって、八重を追い出す気はないんだ)
巳雪矢(適当に相打ちに持ち込みたい、ところだが……)
日比野八重「はあっ!」
八重は汗を散らしながら素早い身のこなしで今度は下段を狙ってきた。
巳雪矢(八重は本気だ!)
■シェアハウス梁山泊・庭(夜)
それから小一時間――
加賀城マリ「うーん、なかなか決まらないね」
烏丸悠斗「どうしますかね、大家さん?」
神山かぐや「……しかたありませんわね」
その瞬間、かぐやさんの姿が視界から消えた。
神山かぐや「やめっ!」
日比野八重「!」
巳雪矢「!」
かぐやさんは私と巳雪矢の間に寸分たがわず着地した。
両手を広げ、そして叫んだ。
神山かぐや「水入りですわ!」
巳雪矢「……」
日比野八重「な、なぜ……!?」
神山かぐや「両者互角とみなします」
神山かぐや「今回は水入りとし、また明日、再戦をいたします」
巳雪矢「明日」
日比野八重「分かりました」
日比野八重(彼の云う喧嘩道、自由な戦い方は邪道……としてもいいのか)
日比野八重(どちらにせよ、明日決まる)
日比野八重(明日こそ……勝つ!)
私は月を見上げ、勝利を誓った。
庭から住人がはけていく中。
巳雪矢「……」
巳雪矢はやはり何を考えているのかわからない目で私を見ていた。

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