シェアハウス梁山泊へようこそ - 3/9

■シェアハウス梁山泊・八重の部屋(昼)

日比野八重「うわあ! 窓から見えるお庭もきれいですね!」
神山かぐや「わたくしが手入れしてますのよ。そちらでみなさん筋トレなどをされたり、自由に過ごしてもらっていますわ」
日比野八重(わくわくするなあ!)
日比野八重(明日からどうやって過ごそう! 楽しみだなあ!)

胸がいっぱいの私は荷物をすべて置いた体でストレッチを始めようとした、その時。
部屋のドアがノックされた。

神山かぐや「あら、双葉さん?」
星双葉「雪矢は出かけて行ったみたい。靴がない」
神山かぐや「今日の夕飯のお当番またすっぽかしたのね!」
星双葉「そうらしいねえ」
日比野八重「雪矢……?」

聞いたことがある名前が出てきて、一瞬驚いた。

巳雪矢――。
彼は高校時代に会った、誰よりも強く、そして冷酷な男だった。

神山かぐや「あら、雪矢くんとお知り合い?」
日比野八重「やっぱり! ……まあ因縁の相手とでもいいますか……」
日比野八重(まさかここで出会うとは。今度こそは……!)
神山かぐや「食事当番をサボるのはイケないわよね!」
日比野八重「いけないと思います! 私の美学が許しません!」
神山かぐや「じゃあ、八重さんにお手伝いおねがいしちゃおうかしら」
日比野八重「はい?」

■商店街(昼)

日比野八重(地図をもらったから帰れるとは思うけど……)

大家さんのお願い事とは夕食のおつかいのことだった。

日比野八重(初日でいきなり頼まれるとは……)
日比野八重(まあ、でもこれからこういった毎日がやって来るんだ。慣れなくちゃあね)

背中にリュックを持っていくように言われた時には山でも登るのかと思ったが、悠斗さんの食料のためだった。

通行人1「ひったくりだ!」
通行人2「誰か、その人を捕まえてえ!!」
日比野八重「えっ!? ひったくりですと!?」

そう思った時、誰かが私の肩にぶつかって走り去って行った。

???「じゃまだ、どけ」
日比野八重「その声は……! 巳雪矢!?」

二人乗りの原付バイクを追いかけて走っている。
巳雪矢は風のように私の前を通り過ぎていった。

日比野八重(巳雪矢が誰かを傷つける前に、私も追いかけなきゃ!)

私も靴ひもを結び直して原付バイクを追いかけて走り出した。

■空き地(昼)

人目のない路地裏、空き地に原付が止まっている。

チンピラ1「ここまでとばせば誰も追って来ないだろ」
チンピラ2「いいからさっさと財布の中身パクってとんずらしようぜ!」
チンピラ1「そうだな」
巳雪矢「とんずらって、どこへ?」
チンピラ2「ひっ、誰だお前は!?」
チンピラ1「あ! 後ろから走って追いかけて来てた奴!」
チンピラ2「何!? コイツ、俺たちの原付に走りでついてきてたのか!?」

雪のように脱色した髪の男が二人のひったくり犯にじりっと歩み寄る。

巳雪矢「それを寄越せ。そのまま動くな」
チンピラ1「チッ、見られちゃ仕方ねえ。やるぞォ!!」
チンピラ2「おう!!」

■空き地(昼)

日比野八重「ふぬっ、これしきの荷物……!」

私は巳雪矢とひったくりからかなり離されて、見知らぬ路地へ迷い込んだ。

日比野八重「あっ!」
チンピラ1「ひいぃ、もう勘弁してくれ!」
チンピラ2「ぐっ、いてぇよお……!」

迷い込んだ路地に一つの空き地があった。
そこにいたのはひったくりの二人組と。

巳雪矢「まだ悲鳴上げられるじゃあねえか、元気なこって」

そう言って、もう立つ気力のない相手の脇腹を巳雪矢は蹴り上げる。
脱色した白髪頭と、冷たい瞳。見間違えようがない。

日比野八重「ひどい……!」
巳雪矢「……!」
巳雪矢「お前は……」
日比野八重「あなたには人の情けってものが無いんですかっ?」
巳雪矢「日比野八重、だな?」
日比野八重「ええ。ここで会ったが百年目、あなたのオーバーキル行為改めさせてもらいます!」
日比野八重「私の美学が許しません……!」

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