「ほっほっほ、少しこわがらせすぎたかね」
キコが黙って下を向いていると、おばあさんはさっきとはうって変わって優しい声音で言いました。
「たまに悪いもんがここを訪ねて来るのでね、ちょっとおどしてみたのじゃよ。なあに、お前さんのような小さな子なら安心じゃろ。ナナカマドくらい少し分けてやろう。今ならいい頃合いじゃ」
そう言っておばあさんはキコを家の中へ招き入れてくれました。
キコはナナカマドを分けてもらえるとなって嬉しくなりました。おばあさんも実は良い人なのかもしれません。
これでお母さんの頼まれ物はぜんぶです。
初めてのおつかいは困ったこともありましたが、キコひとりですべて集められることが出来ました。
キコは玄関の板の間にすわっておばあさんを待ちました。
おばあさんははさみを持って裏の庭へ行きました。
きっと赤く光るような実をたくさんつけたナナカマドの枝を切ってくれるのでしょう。そしてそれをキコにくれるのでしょう。
かごにいっぱいの今日キコが集めたさまざまな木の実を見て、お母さんはなんと言ってくれるでしょうか。
キコは胸がとくとく跳ねるように動くのを感じながらにこにこして座っていました。
おばあさんの家はこぎれいに片付いていましたが、壁をうめつくすように棚に置かれている瓶詰がめいっぱいなのがキコの目を引きました。
その中にナナカマドのお酒もありました。キコのお母さんも作ってくれる、おんなじものです。それはこれからやってくる寒い寒い冬にはかかせないものでした。
だからおばあさんは一度はナナカマドを分け与えるのをしぶったのだ、とキコは分かりました。おばあさんだってナナカマドの実を独り占めしたいわけではなかったのです。自分の冬支度のためにしかたなかったのです。
瓶詰にはほかにキコの知らない植物の漬物や、濃い色をしたなにやらどろっとしたものが入っていたり、こわい顔をしたマムシがつけ込まれた琥珀色のお酒なんかもありました。
おばあさんはとてもいろんなことを知っていて、キコには想像もつかない山のひみつを知っているのではないかとさえ思いました。
向こうの部屋には麻で織った上着がかけてあり、衣替えが終わったようすでした。
裏の方ではおばあさんのはさみがぱちんぱちんと鳴っています。
そこでキコは見つけてしまいました。

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