お兄さんに教えられた大きな大きな切り株をまたいで越えれば、ほら、ギンナンのおいしい匂いが漂ってきました。
「ぎんぎんぎんなん、いっぱいぎんなん」
キコは嬉しくなって駆け出しました。
あたりはきいろい葉っぱで埋め尽くされて、とってもきれいです。
お父さんから聞いたことがあります。
キコが生まれる前に亡くなってしまったおじいさんはそれはそれはきれいなイチョウ色の毛皮を持っていたということです。
だからキコはイチョウを見るたびに知らないおじいさんのことを思い出します。
キコは何も知らなくても、おじいさんはキコのことを知っている気がしてきて、とてもすてきな気分になれるのです。
「ぎんぎんぎんなん、きれいなイチョウ」
歌をうたいながらギンナンを集めていきます。
キコはお父さんにならったように、次々とギンナンのまるっこい実から飛び出た茎を取り外していきました。くるりとまわすと力を入れなくともすんなり取れるのです。
もうかごにはスダジイとクリ、ギンナン、それにアケビが山のように入っています。
あとはナナカマドだけです。
「あーかいあかい、ななかまど」
キコはまた歌をうたいながらナナカマドの木を目指して歩き出しました。
お母さんのおつかいはこれが初めてでした。
今日はキコが初めて独りで森を歩く日なのです。
お兄さんは言っていました。
森の奥にはおそろしく大きな熊が住んでいるから行ってはいけないと。
お父さんは言っていました。
森を超えた向うから猟師が銃を持ってやって来るから行きすぎてはいけないと。
お母さんは言っていました。
森の木の実は森のみんなのものだから独り占めはいけないと。
その言いつけをみんなみんな守って、キコは森を歩いていきます。

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