読み切り

ボクらの鎮魂譚

―前章―

「春のうららの澄んだパンツ」 うん、風流だ。実に風流。と、自分の呟きに満足げに頷く、阿僧祇央一(あそうぎよういち)。高校一年生。今年の四月に入学してきたばかりにも関わらず、制服の着方は既に崩れている。 紙パック黒ゴマ牛乳をじゅじゅじゅこ~っと吸い上げ、 「っぐっふぉ、ぉ、ごほっごほっ……」 むせた。 央一は今、寝転がっている状態だからだ。そして何故央一が寝転がっているのかと言うと、 「うん、良いパン尻だ! 健康的な、……こほっ」 彼の趣味であるパンチラ鑑賞、フィールドワークの真最中だからだ。

キコのおつかい

この頃になると、さあ忙しくなります。 小さな小さな手と手にかごを抱えて、キコはお母さんのおつかいに行くことになりました。 お母さんに頼まれたのはスダジイとクリ、ギンナン、アケビそれにナナカマド。かごいっぱいに取って来るように言いつけられたのでした。 キコは最近めっきりつめたくなった風にかむりのずきんを取られそうになりながら、森の中を歩いていきます。 木の実がある場所は春にも夏にもつれてこられたことがあるので小さなキコでもへっちゃらです。 キコは春や夏に見た、元気な虫たちにかこまれて咲いていた可憐な花々や、慈雨に打たれて鮮やかにぬれた顔ほども大きな葉っぱを思い出して楽しみになるのでした。足どりは自然ととんとんと跳ねるように落ち葉を進んで行きました。 「どんどんどんぐり、ぎんぎんぎんなん、 くるくるくりと、ぱっくりあけび、 あーかいあかいはななかまど」 キコは歌をうたいながら森を進んで行きます。

シェアハウス梁山泊へようこそ

第1話■シェアハウス梁山泊・門前(昼)日比野八重「ここが……シェアハウス梁山泊!」ついに来た。梁山泊――かつて中国は山東省に実在した、賢者たちが集い、切磋琢磨した宿。それがしかも武道の達人が集う場所として今目の前にある。家賃五万円!三食のご…

花火星雲

蒸し暑い海は、よく潮の香りがする。地平線は真っ赤に染まって、サンセットは空をパレットのように色彩をまぜこぜにした。「こら、アクセル! はしゃぎすぎだって」ひとりの少年が砂浜に天体望遠鏡を組み立ててた。その周りを黒い大きな犬が駆け回っている。…